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2013年4月18日 (木)

400兆円を超える社内留保金のワケは?

実は規制緩和に反対しているのは民間業界団体!?だと官僚の現場から見たからこそわかったという指摘の本があります。『ワケありな日本経済 消費税が活力を奪う本当の理由』です。著者の武田知弘氏は大蔵官僚として経済データを集計し分析していたサイドの人間。信頼性の高い税務データを中心に考察が展開されています。

●莫大な社内留保金の理由は?
 現時点で400兆円を超えている退蔵マネーが大企業の社内留保金。主な原資は98年以降のリストラと社員の給料の下げ、下請けをピンハネして貯め込んだ企業内貯蓄。鳩山首相時に共産党が莫大な社内留保金について指摘し、その利用を提案したことがありましたが、ネットでは反対意見も目立ちました。大企業は銀行融資の返済やリストラなどのために70~80兆円の引当金が必要だという理由です。しかしこれは間違っていて、計算上もつじつまが合いません。そもそも引当金は「引当金」として計上されていて会計上の処理は済んでいるものだからです。留保金はそれ以外の余剰資金になります。それに400兆円から80兆円(返済充当分など)を差し引いても320兆円もの留保金が余ります。社内留保金を利用するのに反対する会計上経済(学)上の理由はどこにもありません。むしろ流動性選好の結果としての社内留保金はクルーグマンなども絶対に認めない余剰資金でしょう。この莫大な留保金が経済のイレギュラーな状態やデフレの元凶なワケです。

           
ワケありな日本経済ー消費税が活力を奪う本当の理由ー

著:武田 知弘
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●中間共同体的な自己保身が原因!
 それでも社内留保金が増加する理由が日本にはあります。それは中間共同体でもある経営幹部と労組の理由不明のエゴ(防衛機制的な自己保身)かもしれません…。これらを正当化するイデオロギーとして会社は社員のものだという言い分があり、労使に支持されています。でも法的にも経済(学)的にも会社はその資金を出している出資者のもの。社員は社長も含めて雇われている「従業員」であって会社の所有者ではありません。

 かつて村上ファンドが、あるアパレル会社の社内留保金800億円を株主に還元するように要求したら、株主に金を渡したくない会社(経営陣)側はあわてて800億円分の不動産を買おうとした…というバブル以前の成金丸出しの対応をした会社がありました。たいして能力のない経営者が従業員のみんなの努力を自分の成果のように勘違いし、会社の資金を提供している株主を無視し、無能ゆえにたまたま経営陣に加わることが出来た自分の自己保身のために給料と配当をピンハネしている…という(ことが許されている)現状とは何か? 「作為の契機の不在」であるかのような経営陣や労組の認識はもちろん「フリ」…。これは簡単にいえばKYを装うことで自分の利益を守っている経営者や労組員がいるということなのでしょう。

 企業は法的にも資本的にも株主のもの。社員は雇用されている(従業員)のであって会社に対する所有権というものはありません。社員が会社に対してもっている権利はその労働の対価とトレードオフのものであってそれ以外ではなく、同じように株主は会社に対して出資率に応じた所有権をトレードオフとしてもっているのだといえます。

●格差問題はあくまで他人事!?
 労働は剰余価値を生み、資本は利潤を生みます。その利潤から出資率に応じて株主は配当を受け、従業員(会社員)は労働に応じて給料を受け取る…。それなのに労働者は給料を安く抑えられ、株主は配当を低く抑えられている…。問題はここにありそうです。サラリーマンも株主も経営陣によってピンハネされている可能性があります。経営陣という法定な根拠ももたない幻の中間共同体?によって搾取されてるのが現在の日本の企業なのだといえるかもしれません。増えるのは社内留保金ばかり…。それは、ナゼなのでしょうか?

 経営トップは社長ですが、大企業になるほど静かでモノを言わない存在感の薄い、仕事の出来ない新入社員がそのまま歳を取ったような人間が社長になる…と朝生TVでも複数の元企業人たちから指摘されていましたが、それが事実なのかもしれません。彼らの自己保身はKYを装うこと、「作為の契機の不在」であるかのように振舞うことで自らの既得権を守っている…というのが真の姿なのではないでしょうか。それは中間共同体(構成者)特有の防衛機制でもあるかもしれません。あるいは中間共同体の一員でしかないことを全面に掲げてそこでこそ自己利益を得、自己保身する弱者ならではの立ち振る舞いなのかもしれません。ハイエクらの強い個人であることを主張するイデオロギーを手本とした小泉竹中改革が嫌われる真相もこういうところにありそうです。それとイデオロギッシュなサヨクが嫌われるのも同根である可能性が高いかも…。卑近な表現をすればイデオロギッシュなものは“上から目線”に見えます。人間は何事も抑圧=去勢なしで内化できず、食事さえも消化という負担(身体にとっては抑圧)なしでは成り立ちません。大学の講義で「用語がわからないのは教授の責任だ」とキレている学生がTVにでていましたが、毎日訳のわからない講義に出て、必死で用語を調べていた○○年も前の学生の姿はそこにはないようです。こういうエートスが充満しているのが現在なのかもしれません。いずれにせよ弱者が実はすでに主導権を握っている…というのが現代社会なのではないでしょうか?

           
本当はどうなの? 日本経済―俗説を覆す64の視点

著:熊野 英生
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問題は絆やソーシャルが叫ばれる割にはまだまだそれとは反対の認識が多数であり主流であること。これは バブル以前からの一億総中流という意識に象徴される事実です。
 「中流意識の強さと格差問題の関係は、格差問題があくまで他人事であるところに特徴がある」『本当はどうなの? 日本経済―俗説を覆す64の視点』)という指摘がありますが、これと中間共同体的な意識は裏表あるいは相互補完しながら社会的にはメインでありメガなトレンドなのでしょう。そういう現実をクールに見た時にローティのいうような「憐れみ」的なものがクローズアップされる(そしてそれしかないような)現実があります。

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受信: 2013年4月18日 (木) 20時23分

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