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2012年7月20日 (金)

アメリカ(人)のダブルスタンダードの理由は?

橘玲さんは『(日本人)』で、アメリカ人がTPOによって異なるスタンスをとることを紹介してます。ローカルルールとグローバルスタンダードの使い分けです。それはダブルスタンダードでもあるでしょう。

アメリカ人が相対(一対一)で発揮する傲慢なその態度は、ローカルルールによるもの。しかし、アメリカ人が3人以上の多様な人種間で発揮する態度は、グローバルスタンダードによるもの。

 ローカルな自分を基準にした自己チューなエゴは、まるで子供のようなものかもしれません…他方、グローバルには、ある基準を設けて自らも他者もそれへの帰依が要求されるもの…。

 1人のアメリカ人がTPOの違いによって2つの異なるスタンスを示す…その理由は何なのか?
 ある意味で、多重人格でもあるかのように、異なる態度を使い分けるアメリカ人…。
 ほとんどの人が、このアメリカ(人)の態度に戸惑うのかもしれません。(TPPをはじめ国際紛争などでも、多くの場面で、これらのアメリカの姿勢はわかりにくいものがあり、また時には明白に間違ってもいます。ベトナム戦争では戦争を開始したマクナマランが戦後に間違いを認め、イラク戦争では戦争をはじめたラムズヘルドが終結前に間違いを認め辞任しています…

●アメリカは狂っている?

 この異なる2つの態度について、どう対応するか、まとめて語ったようなコメントをTVで見たことがあります。現防衛大臣の森本敏さんが、以前朝生TVで“アメリカは狂っているが、ついて行かなければならない”と発言してました。ボクが興味をもったのは、“アメリカは狂っている”という指摘。(アメリカについて行かなければならない…というのは以前から共産党が激しく批判していた対米従属そのもの。日米軍事同盟といいながらも地位協定によって主従関係である以上、日本には自立した決定権がありません。これについては共産党のオリジナルな見解からはじまった対米従属論がいまやスタンダードになって左右の別なく広く認知されています

 問題は“アメリカは狂っている”の中身。いったいアメリカの何が狂ってるのでしょうか?
 あるいは狂っていなくても、日本サイドがそれを理解できないために“狂ってる”と感じるのでしょうか?

 世界最大の国家が狂っていたら、それは大変なことです…。
 アメリカのドコが狂っているのか? ナニが狂ってると思わせる原因なのか?
 自分がアメリカに興味をもったのは、これがキッカケでした。

 (祖父が仕事でアメリカ視察に行こうとしたらアメリカから断れたことがあるそうです。以前は“太平洋戦争の兵役経験者はアメリカに入国できない”という決まりがあったらしく、確実にある種の人々の間では戦後が続いていたということなのでしょう

●狂って見えるワケは?

 アメリカがどう狂っているか、なぜそう見えるか?…は、とても難しい問題…ですが、アメリカが狂っているという中身は別として、ひとつのヒントがありそうです。

 自己チューで子供のような態度と、グローバルを基準にした、マイケル・サンデル白熱教室のテーマになるような…普遍的な正義を主張する…態度。この2つの態度の違いを考えていて、ある理論を思い出しました。吉本隆明さんの思想です。特に政治や国家を扱った共同幻想論が関係ありそうな気がしました。

 相対の態度というのは、文字通り相対(一対一)の場合の態度で、これは吉本理論では<対幻想>と呼ばれるもの。3人以上の場合というのは<共同幻想>と呼ばれるもの。前者は親しい間柄に特有のもので、後者は公的な関係でのもの。前者は自己チューで自己認知を求めるようなスタンスが主であり、後者は公や共同体のために自己規制したりボランティアなど負担をおうものです。
 意外なことに、吉本隆明さんの理論では、アメリカのダブルスタンダードを理解するのがそれほど難しくはないような気がしました。

●日本の問題としては…?

 アメリカが2つのスタンスを使い分けているらしいことは解ります。
 あらゆる人種と言語、祖国や母国ベースでは対立する民族や宗教さえ混在し、一緒に暮らしています。この常態化したコンフリクトのなかで生まれたのが、ダブルスタンダードあるいは2つの立場を使い分けることではないでしょうか。

 誰でも自らのローカルなコミュニティーでは自己チューで、差別的(人種などの)な発言などもジョークレベルならば許される。しかし、多種多様な人々が出会う公的(あるいはグローバル)な場所では“普遍的な正義”が主張され、誰もがそれを本気で尊守する…。

 

シアトルは全米で唯一の白人とネイティブが一緒につくった街だそうですが、マリファナの扱いやネイティブの権利など自由や個人の裁量権が大きく、また親日的な街でもあるようです。死刑をめぐっても州ごとにまったく違う憲法をもっているアメリカ。日本の対外的な態度、そのアメリカに対するスタンスなどは、これらアメリカの特徴と比べてどのようなイメージ、あるいは“価値”を体現しているのでしょうか?



           
(日本人)

著:橘 玲
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価格:¥1,680

   

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