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2011年12月31日 (土)

96、97年ピーク以降下落し続ける理由…『デフレの正体』

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●全数調査データによる圧倒的な事実!

 2011年の元旦、日本のこれからを考える経済番組で希望や可能性を語れる論者として紹介されたのが著者のマスメディア初登場。バブル崩壊後は大部分の論者が政治や社会を批判するばかり、そうでなければ意義不明の御用学者…という情況の中での新鮮な登場。日本全国ほとんどの自治体を歩いて回った著者の説得力ある主張にメディアが注目したのでしょう。現場からの見解であり、参照するデータも全数調査でもれがない全国規模のデータばかり。何らかの理論や先入観による言説ではなく全国の現場を直接見て、全国規模で長期スパンのデータとつき合せて考えられたのが本書の内容です。

           
デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

著:藻谷 浩介
参考価格:¥760
価格:¥760

   

 本書のベースになっているデータの特徴は以下

  ・ソースはネットで公開されているものだけ
  ・全国調査のものだけ
  ・数値は絶対値のものだけ
  ・スパンは長期のものだけ

 『デフレの正体』で扱われている数値は全数調査のものばかりで調査対象の漏れがありません。全国を範囲とし対象となるもの全てが把握されている数字です。マーケテイングという名目で限られた範囲しか調査していないものとも根本的に違います。しかも変化率や対前年度比などの相対的な数値ではなく、個別の絶対数を長期にわたって把握したもの。それは事実を見るという一点にフォーカスしたスタンスのものです。
 統計値といいながら率(確率・変化率)しか見ない近視眼的な評価は除外されています。統計の本来の意味は揺るぎない絶対値を把握することであってスパンを限ったナントカ率で思考停止に陥ることではないからです。

 20年間も景気が浮上しないという事実から、基本的に既存の経済のあり方が通用しなくなってきていることを念頭に現行?の経済学にも否定的です。まず現実を把握する…そこからノンジャンルで思索している著者は長期スパンで全国規模のある変化があることを発見…それが「人口の波」です。

●96、97年をピークにすべてが下降へ

 経済産業省の商業統計をはじめ、書籍・雑誌の売上、貨物総輸送量、旅客輸送量、ビールの販売量、1日あたりのタンパク質の摂取量や水道使用量…など多くの統計から導き出された共通の傾向があります。96、97年をピークに減少しはじめたという事実です。これこそが「人口の波」に影響されて変動する経済をはじめとした変化の現れでした。コンドラチェフの波以上にリアルなのは確か。

 小泉竹中路線の構造改革で格差が拡大した!という批判がよくあります。経済的に期待されたトリクルダウン効果がなかったのが原因ですが。そのいちばん大きな要因が「人口の波」だったのを著者はデータから読み取りました。私見では97年橋本内閣による消費税増税が、ようやくバブル崩壊から回復しそうだった景気の芽をつぶしてしまった事実はとても大きいと思いますが、もっと根源的な原因が「人口の波」だったのです。

 著者がマクロ理論に対して挑発的なスタンスなのは確かですが、ツラレた人間が多いものも確か。本書に対する「経済学的には、誤りだらけの本です」という経済学信奉者からの批判は、逆に経済学(その信奉者にとっての)が誤りだらけだということを証明してしまっているかもしれません(バブル崩壊以降の失われた20年間のあいだ無力だった言説(経済学?をはじめ)は無能無効であることは否定しにくいもの。すべてが日銀や政府だけの責任であるわけもなく、そういう状況下でまず的確な現状認識を示した本書は貴重です)。少なくともそれは私が知ってる経済学(剰余価値や限界効用といった価値を追究する学問)とは違います。本書のようにフィールドワークによって現実を直視した見解と、帳簿と簿価は普遍かつ不変だと思い込んで三面等価理論やマクロ経済学を教条としてしまっている立場と、どちらを一般の読者は評価するでしょう。50万部を超えて売れ続ける本書が照らし出すのは不況の現況や原因だけではなく、ネットで顕在化するイタイ言説や歪んだ認識の多さでもあるのかもしれません。

●理論ではなく現実をみる人たち(当たり前だけど)

 『デフレの正体』の特徴は繰り返しますがデータが全数調査、全国規模、長期間の変化というもの。全国規模で大きく長い変化を反映したものだといえるでしょう。
 本書が提起した「人口の波」の問題と関連する経済学上の考察が「世代会計」。この「世代会計」に基づいた本が『この国の経済常識はウソばかり』(トラスト立木)です。 重要なのは基本となる公的なデータ。そのデータを作る官僚の立場にいた著者の『ワケありな日本経済ー消費税が活力を奪う本当の理由』(武田知弘)は大企業の莫大な社内留保金についても言及している唯一の経済書かもしれません。日本のバブルとアメリカの関係など興味深い見解もあります。
 以上の3冊はバブル崩壊以降の日本の社会・経済をめぐる状態について現実を直視した必読の本。ナゼだか3名とも経済学者ではありませんが…。

 経済の大きな動因ともなる政治的なファクターも含めてグローバルなレベルから日本と世界を俯瞰しているのが『超マクロ展望 世界経済の真実』(水野和夫、萱野稔人)。イラク戦争がドルをめぐる戦いだったこと、日経平均株価がアメリカに左右される理由などラジカルな見解が続き、また3.11へ臨んだ日本人の姿勢に世界に冠たるものになる可能性だどが類推できる内容になっています。

 『デフレの正体』をはじめ以上は理論ではなく現実を直視するためには必読の4冊です。豊富なデータを読むだけでもためになります。また数値だらけのような読みにくさもありません。
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スルドイ書評で人気のweb「404 Blog Not Found」のコメントが「人口の波」などについても参考になります。

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