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2009年2月18日 (水)

卵のプレゼンス

 最初にWebをはじめたのが村上春樹作品を自由に語りたかったからで、今回のエルサレム文学賞受章で初心?に戻りデジャブのようなものを楽しむことができました。件の感想は…

 今回のエルサレム文学賞受賞のスピーチは、
 はじめて踏み出したような一歩に見えました。
 自分のジャンルの外へ、
 自分の方法でもって初めて歩み出た、という…。

 <小説家という嘘の紡ぎ手>から<ライターという事実の記述>へのシフトとチャレンジは「アンダーグラウンド」でトライされましたが、今回は具体的な行動としての一歩だと思います。これからも別に何かしてくれというワケじゃありませんけど。

 以前に読んだ雑誌か本で、村上春樹さんのコメントで印象に残っているのが学生運動の時代の人であることをたずねられた時のコメント。〝心情的には支持できても人と組むのがイヤだし、デモで手をつないだりするのもイヤだ〟というようなコトを言っていたと思います。何かすごく共感できて、同じ感覚の人がいるんだ! とちょっとウレシクなったのを憶えてます。

 

 1979年  『風の歌を聴け』
 1980年  『1973年のピンボール』
 1982年  『羊をめぐる冒険』

 呆れるほどリピートして浸ったのがこの3部作。形容に数字を使うクールさとそのリアリティ。社会の原形みたいに3名だけといっていい登場人物。僕と鼠と女の子。独白がダイアローグになっているような不思議な言葉と文章。
 何よりも、内容ではなく、文体そのものがこれほど魅力をもった作品はいままでなかったような気さえします。世界的にも安部公房以来の日本文学のプレゼンスだと思います。当初日本では、村上春樹作品への激しい批判がありました。村上龍作品も同様で、表現の世界では新しいものが生まれつつあったんですね。高橋源一郎の登場も衝撃だったし。10年かけて文体を変えた柴田翔のような純文学の重鎮もいますが、村上春樹の3部作は当時コピーライターご用達でした。仕事で『羊のレストラン』を書いている高橋丁未子さんのところへ取材に行ったり、村上春樹さん本人はメキシコへ行っていた期間で直接取材できなくて残念でしたが…いくつか想い出があります。八重洲ブックセンターで見かけたステンコートとコッパンのご本人はまるで<村上春樹>でした。当然だけど。w

池田blog「壁と卵」で今回の件を知りました。池田氏のコメントでありましたが、村上春樹さんのプレゼンスは日本の誇りですね。

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