ハイイメージ論

2015年1月15日 (木)

「像としての文学」から9

「概念」に折り畳まれた生命の糸は、
たぶん存在が存在自体を反省したときの残像である〔純粋本質〕と、
存在がそのもの自体であるような〔具体的な存在物〕の像との、
主観内での統一から成り立っている…

     (『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての文学」P77ちくま学芸文庫)

■村上春樹の「蛍」の特徴として「「概念」がよびおこす…文体の〔意味〕にそった像(イメージ)」と「文体の〔意味〕からかけ離れた像(イメージ)」が二重になってうみだされ、さらに「「概念」とはまるでかかわりのないかにみえる像(イメージ)をよびおこす…」と分析され評されています。「グラフィカルにはぼんやりしているが、それに反比例するような多彩な像(イメージ)」という指摘は共同幻想ハイイメージ)や世界視線の特徴としても重要なポイントになります。

2015年1月 6日 (火)

「像としての文学」から8

この作者の文体はさり気ないようで、じつはイメージ(像)の喚起力がつよく、
それは作品をすぐれたものにしているおおきな要素になっている。

            (『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての文学」P69ちくま学芸文庫)

■村上春樹がイメージの喚起力が強い作家だと分析評価されています。サンプルは「蛍」。
「言葉の「概念」とそれが喚起するイメージ(像)」について思索され、特徴として言葉の意味に対応するイメージではなく「〔意味〕にむかって直交する」ものから生成するイメージであることが指摘されています。

       -       -       -

彼女の求めているのは僕の腕ではなく、誰かの腕だった。
彼女の求めているのは僕の温もりではなく、誰かの温もりだった。

少なくとも僕にはそんな風に思えた。

彼女の目は前にも増して透明に感じられるようになった。
どこにも行き場のない透明さだった。時々彼女は何の理由もなく、
僕の目をじっとのぞきこんだ。
そのたびに僕は悲しい気分になった。
                           (村上春樹「蛍」より)
    (『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての文学」P68ちくま学芸文庫)

■幻想の3つの位相としては以下のようなことがいえるかもしれません。AAA(アンダーライン)は「僕」の対幻想の否定としての共同幻想。AAA(強調)は反復固定化する自己幻想。AAA(斜体)は共同性ではない純粋本質。読者の判断がシフトする、第一義的な判断が停止している純粋本質のパートが<時点ゼロ>として、次の方向と強度を決定するものとして作用します。トレンドの志向とその強度は<シンクロ>する場や対象によることになります。


           
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2014年12月30日 (火)

「瞬間論」から8

嗅ぐという感覚は呼吸するという根本的な生命行為にまで関連づけられ、
味わうという感覚は飲むとか吸うとか、なめらかとかざらざらしているとかいう
乳児期の触知の全体的な感覚と不可分なものとして
生命がじぶんを維持する根拠になっている快感の発生点に結びつけられる。

わたしたちが純粋な言語行為のはじめとおわりにあるとかんがえているものもまた、
感覚することが行為することだという瞬間に成り立っている
意識の現在性とおなじものとかんがえることができる。

『ハイ・イメージ論Ⅲ』「瞬間論」P49ちくま学芸文庫)

■解剖学的に、栄養(外部からor外部を)を摂取するチューブである腸管=消化器官をメインとするのが生命の形態。外部を捉えようとする「触知の全体的な感覚」のもとに統合されつつ、チューブはその運動や軋みから音を発していきます。声も、言葉も、奏でることも「意識の現在性とおなじもの」として、そこにあり、摂取と運動、内臓と筋肉の交換領域としての体壁が生命活動そのものとしての音を発てていきます。

           
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2014年12月25日 (木)

「瞬間論」から7

わたしたちの国で鬱病の精神現象学者としてよく知られているテレンバッハは、
ここでわたしたちが純粋の言語行為の起源としてみなしているものを、
口腔の感覚運動行為の根底にあるものとして、とても具象的に解明している。

『ハイ・イメージ論Ⅲ』「瞬間論」P47~48ちくま学芸文庫)

■嗅いだり味わったりする嗅覚、味覚と触覚を「一つの生物学的行為として融合している」とするテレンバッハ。吉本隆明は、そこから「感覚することが行為すること」だとし、その「瞬間に成り立っている意識の現在性」は「純粋な言語行為のはじめとおわりにある」ものと同じものなのだと思索していく。「純粋瞬間が成立させるドラマ」として文芸作品がフォーカスされていく…。

2014年12月22日 (月)

「瞬間論」から6

…純粋の言語行為がどこから生まれ、何を目的すか…

<聴く>ことと<視る>ことの統合を最終目標として…
<触る>ことと<味わう>こととがおなじであった生命(体)の初源の感覚行為からはじまったものだ。

『ハイ・イメージ論Ⅲ』「瞬間論」P47ちくま学芸文庫)

■言語行為がどこから生まれたか? それは感覚することと行為することとが不可分だったところ、生命の初源から…という指摘が言語にとっての美の生成の機序として説明されていきます。生命の発生から芸術や宗教までも貫く吉本隆明のラジカルな認識がここにあります。

           
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2014年12月 9日 (火)

「像としての文学」から7

言語の「概念」の流れに折り畳まれた生命の糸のつよい重なりと、
「概念」がよびおこすため、グラフィカルにはぼんやりしているが、
それに反比例するような多彩なイメージ(像)が、文学作品を芸術にしている本質だといえよう。

『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての文学」P76ちくま学芸文庫)

■視覚像=「グラフィカル」なものに「反比例するような多彩なイメージ」とは想像力によるもの。言語の「概念」に折り畳まれたものとの「つよい重なり」が芸術の本質であることが示されています。その生成の機序は<世界視線>のそれと相同であるところが重要なポイントでしょう。


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2014年12月 3日 (水)

「像としての文学」から6

言葉の「概念」と、それによって喚起されるイメージ(像)との関係は、
ほんとうはグラフィカルな映画や画像にはまったく存在しないもので、
言語の表現に特有な「概念」とその喚起するイメージ(像)との関係といえる。

『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての文学」P70ちくま学芸文庫)

■言語の「概念」と、何らかに喚起されるあるいは想像される「イメージ」の関係に、まったく視覚像が介在しない…または視覚像には「概念」と「イメージ」の関係が存在しない…。言葉の「概念」をイメージ=像(心像)の生成の構成素との関係(無関係性)として把握した、ある位相での説明になります。ここでは知覚が予め捨象されていることが指摘されています。

2014年9月23日 (火)

「像としての文学」から5

触覚的なもの、視覚的なもの、聴覚的なものは、
現実には「概念」にかかわることができない。
だがそれらの知覚的なものすべては、
折り畳まれた生命反映を無意識として積みかさねた形で
「概念」のなかに含んでいる。

『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての文学」P66ちくま学芸文庫)

■概念にかかわらないが、そこに含まれている(ハズの)知覚的なもの…という矛盾。マルクスが「五感の形成は、いままでの全世界史の一つの労作である」と評した知覚形成と、言語概念の生成を架橋するものとして、イメージを手がかりにアプローチするハイイメージ論のコアが、ここにあります。

2014年7月 1日 (火)

「像としての文学」から4

像(イメージ)としての言葉といったら形容矛盾にしかならないが、
作品が文学として表現するのは、極論すればこの形容矛盾いがいではない。

『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての文学」P65ちくま学芸文庫)

■言語のイメージを探究した『言語にとって美とはなにか』は、その現代版として『ハイイメージ論』に発展します。それはイメージの文法ともいうべきものの追究です。イメージから言葉にアプローチしていく過程で、それを見る<世界視線>がフォーカスされ、自己の表出であるとともに環界そのものでもある…という矛盾と、矛盾そのものである資本主義と、それを可視化する世界視線とが同定されていきます。

2014年3月 3日 (月)

「瞬間論」から5

根本的な理由は、書く(記述)という行為が、
現実的な行為と純粋な言語行為とに分割し、二重化されたときに、
作者によって意識してつくり出された混沌にその根拠をおいている。

『ハイ・イメージ論Ⅲ』「瞬間論」P47ちくま学芸文庫)

■読者が文学作品を読んでリアルと感じたり錯覚したり感動したりする理由は何なのか…という吉本理論の根本を解いたもの。言語にとって美とはなにか?を探究し思索し続けた結論が簡明に端的に書かれています。<純粋疎外>概念によって解かれるもののことです。

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