聴覚(心的領域)の一次対応としての空間性
聴覚が受容するのは、時間的な距りではなく、
可聴周波数と波形による振動物体の空間的な性質である。
いわば、もっとも発達した感覚と考えられている聴覚は、
遠隔化された触覚にたとえることができるものであり、
その空間化度は、一定の方向に物体から外延される全空間との接触性を意味している…
(『心的現象論序説』【Ⅲ 心的世界の動態化】「3 度(Grad)について」P101)
☆ここでは「おおくの神経生理学者」や「ヘーゲル」が「聴覚の属性を空間性とかんがえずに、時間性とむすびつけようといている」ことを「それは誤解である」と否定しながら、心的現象論ならではの時空間概念を基礎にした説明がされます。聴覚は単位時間あたりの空気の振動を受容し、2つの聴覚器官(耳)へ到達する音波の時間差から音源の方向や位置を探るものです。どんな複雑な音もホワイトノイズもオーケストラの演奏も高調波倍音もホルマント構造の音も、聴覚に受容される瞬間は1点の接触点でしかありません。
「視覚(心的領域)の一次対応としての空間性」と同じように聴覚の心的領域の基礎として一次対応としての空間性があります。各感覚におけるこの一次対応からのズレが、原生的疎外 → 純粋疎外というベクトル変容の本質になります。
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