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2015年3月

2015年3月20日 (金)

無自覚がはじめる2

 <絶対に言及できないモノゴト>に対して代入される<あるモノゴト>はドコからくるか? 何に由来するか? という問題があります。これが心的現象におけるいちばん根本的で、究極の問題であり、ただひとつの答えでもあるものです。

 <絶対に言及できないモノゴト>に対して代入される<あるモノゴト>とは、<外部への認知>そのものなのです。この認識の循環が心的システムそのものであり、その発現が心的現象そのものとなります。

 論理的に自己言及不可能という自己矛盾(内部への認知)を解消するために、そこへ言及可能な環界への認知(外部への認知)を代入します。代入はあくまで代入であり、何を代入しても暫定的、蓋然的に心的な安定性を得るだけですが、この暫定性こそが<生きていく>理由そのものだと考えられます。<死>は環界への全面的な復帰であり、心的には突然の終了でしかありません。

                          (独解、吉本さん羊書「無意識の多重性」P97)

自己言及の不可能性としての絶対に言及できない領域には、暫定的に何かを代入してしまうというシンプルな機構が心理の大きな面、あるいは基本的な面を占めています。左右の視野を分断して一方だけを可視にしても、不可視の方でも「視えている」と判断することなどを典型例として{<不可視であることそのもの>が不可視}になっており、つまりすべては可視だと判断されるという認識の特徴があります。それは{<無意識そのもの>を意識できるか?}という問題でもあります。いちいち感覚器において知覚できない<関係>というものを、関係そのものをマテリアルだと看做すことによって、あたかも<関係>が存在しているように認識する…そこでも同じ機序によって認識は形成されます。吉本隆明が追究した共同幻想が生成する(orしてしまう)、その理由です。さらに<死>は当人には絶対に認識できないものであり、第三者間においてしか認知されないものとして<他界>を形成します。<他界>への認識は究極の典型的な幻想であり、<関係>上にしか生成しない認識ともいえます。

2015年3月11日 (水)

無自覚がはじめる

 無意識つまり意識できない、対象化できない、自覚できない=無自覚というコトによって認識にさまざまな不確定と不安定が生じます。この不定性そのものが心的な動因そのものになるのですが、認識そのものの不定性≧流動性もまた再生産されるコトになります。

 この不確定・不安定という不定性はそのまま<感情>となります。より正確には価値判断以前の<中性の感情>として、あらゆる心的現象の動因であり認識の前提でもある心的状態です。

 

 不定性の再生産は、以前のエントリーで書いた<内部への認知>(自己矛盾)と<外部への認知>(認知不全)が相互に循環する構造をもっているコトによります。


 <内部への認知>における<絶対に言及できないモノゴト>に対して、心的システムはシステムの安定のために<あるモノゴト>を代入します。この作用=力動は心的現象の中でいちばん根本的なものであり、強度そのものだといえます。

 また
 <外部への認知>における<認知できる可能性(という担保)>は、心的システムの拡大のための動因であり、環界へのアプローチの基本となる強度です。

                          (独解、吉本さん羊書「無意識の多重性」P97)

☆対象認識が基本である心的現象では、対象化できないということはそのまま不確定であり不安定である不定性になります。規範化の不全ともいえるこの状態は<純粋疎外>における典型的なもの。規範化せず、概念化せず、それはある種の流動性そのものとして保持されます。それが<中性の感情>です。『心的現象論序説』における感情についての論考の圧倒的な独創性は、その時空間概念とともに絶対的な科学性でもあるものとして、いまだに言及さえされることがありません。


           
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2015年3月 2日 (月)

無意識がはじめる2

 <内部への認知>は絶対に言及できないモノゴト≧自己そのものを動因としています。
 <外部への認知>は認知を予期できる可能性を担保として作動します。


 <内部への認知>は絶対に言及できないモノゴト≧自己そのものを動因とする
 あるいは
 絶対に言及できないモノゴト≧自己そのものを動因とする<内部への認知>
 ....以上のように考えられます。

 <外部への認知>は認知を予期できる可能性を担保として作動する
 あるいは
 認知を予期できる可能性を担保として作動するのが<外部への認知>
 ....以上のように考えられます。


自己言及が不可能な領域   (自己矛盾)
  ゲーテル的限界を特徴とする自己言及できない領域としての無意識
  自覚できない自己意識としての無意識

不可知な領域としての無意識   (認知不全)
  指示決定されながら自己確定不能の対象(性)としての無意識
  外部からの情報に対する不可知であるがゆえの無意識

                       (独解、吉本さん羊書「無意識の多重性」P96)

☆<内部への認知>と<外部への認知>はそれぞれ<植物的階程>と<動物的階程>に対応しますが、さらに、ファンクショナルなものとして吉本の概念装置に『母型論』で提出された<内コミュニケーション><外コミュニケーション>があります。ここでは拡張して<内コミュニケーション>には代謝やレセプターレベルの応答も入れ、意識外(無意識)の細胞間コミュニケーションや10000分の1秒でレスポンスする実母の声音の影響なども対象にしています。むしろこちらの方が重要かもしれません。<外コミュニケーション>は基本的に言語を媒介とするものです。

           
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