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2015年1月

2015年1月22日 (木)

<イメージ>のはじまるところ

  像は、人間が対象を知覚しているときには不可能な意識である…

  言語の像をつくる力は、指示表出の強い言語ほどたしかである…
  言語の像は、言語の指示表出と対応しており、
  また自己表出を起動力とするなにかである…

  像とは…対象的概念とも対象的知覚ともちがっている…
  言語構造の指示表出と自己表出の交錯した縫目にうみだされる…

        (『言語にとって美とはなにか Ⅰ』「第Ⅱ章 言語の属性」「3 文字・像」P97)

  言語における像がなぜ可能となるか、を社会的な要因へまで
  潜在的にくぐってゆけば、
  意識に自己表出をうながした社会的幻想の関係と、
  指示表出をうながした生産諸関係とが矛盾を来たした、
  楽園喪失のさいしょまでかいくぐることができる。

        (『言語にとって美とはなにか Ⅰ』「第Ⅱ章 言語の属性」「3 文字・像」P100)

■言語から像=イメージがどのように生成するかが考察される『言語にとって美とはなにか』の中核となるパート。ソシュール『言語学原論』サルトル『存在と無』から<価値>を分析抽出しながら、マルクスをトリガーに吉本オリジナルの思索が展開されます。自己表出の動因である<価値>が導くものとしての像=イメージがクローズアップされます。サルトルの『想像力の問題』での知覚とイメージの排他的な関係への指摘を援用しながら、それとは逆に指示表出の強さがイメージを導くことが指摘されます。カント『判断力批判』に古典的な意味での言語における像の概念を見出しながら、それへサルトルの指摘が構造をあたえたと分析しつつ、全世界史的なマルクスが援用されます。「楽園のさいしょ」をめぐる思索が『アフリカ的段階』であることはいうまでもありません。(*犬のイメージをつくる形態<犬>、概念<犬>

           
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2015年1月15日 (木)

「像としての文学」から9

「概念」に折り畳まれた生命の糸は、
たぶん存在が存在自体を反省したときの残像である〔純粋本質〕と、
存在がそのもの自体であるような〔具体的な存在物〕の像との、
主観内での統一から成り立っている…

     (『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての文学」P77ちくま学芸文庫)

■村上春樹の「蛍」の特徴として「「概念」がよびおこす…文体の〔意味〕にそった像(イメージ)」と「文体の〔意味〕からかけ離れた像(イメージ)」が二重になってうみだされ、さらに「「概念」とはまるでかかわりのないかにみえる像(イメージ)をよびおこす…」と分析され評されています。「グラフィカルにはぼんやりしているが、それに反比例するような多彩な像(イメージ)」という指摘は共同幻想ハイイメージ)や世界視線の特徴としても重要なポイントになります。

2015年1月 6日 (火)

「像としての文学」から8

この作者の文体はさり気ないようで、じつはイメージ(像)の喚起力がつよく、
それは作品をすぐれたものにしているおおきな要素になっている。

            (『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての文学」P69ちくま学芸文庫)

■村上春樹がイメージの喚起力が強い作家だと分析評価されています。サンプルは「蛍」。
「言葉の「概念」とそれが喚起するイメージ(像)」について思索され、特徴として言葉の意味に対応するイメージではなく「〔意味〕にむかって直交する」ものから生成するイメージであることが指摘されています。

       -       -       -

彼女の求めているのは僕の腕ではなく、誰かの腕だった。
彼女の求めているのは僕の温もりではなく、誰かの温もりだった。

少なくとも僕にはそんな風に思えた。

彼女の目は前にも増して透明に感じられるようになった。
どこにも行き場のない透明さだった。時々彼女は何の理由もなく、
僕の目をじっとのぞきこんだ。
そのたびに僕は悲しい気分になった。
                           (村上春樹「蛍」より)
    (『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての文学」P68ちくま学芸文庫)

■幻想の3つの位相としては以下のようなことがいえるかもしれません。AAA(アンダーライン)は「僕」の対幻想の否定としての共同幻想。AAA(強調)は反復固定化する自己幻想。AAA(斜体)は共同性ではない純粋本質。読者の判断がシフトする、第一義的な判断が停止している純粋本質のパートが<時点ゼロ>として、次の方向と強度を決定するものとして作用します。トレンドの志向とその強度は<シンクロ>する場や対象によることになります。


           
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