利他的な行為の停止からはじまる共同性
共同性の前提とは、ある意味で、自他を分けることです。
自分サイドの人とそうでない人を分けるのがもっとも重要なポイントで、このことそのものが自分の所属する共同体と共同体外とのボーダーにもなります。
具体的には、利他的な行為の停止が共同性の前提となります。
生後6~8ヶ月の乳児でも、他者を助けていたのに、それが3才くらいからケースバイケースになるのです。この時、自分にプラスのものとマイナスのものを峻別することが基本になっています。
生後六~八か月の赤ん坊も、
社会的行動で相手を評価している…
(『<わたし>はどこにあるのか ガザニガ脳科学講義』 第5章 ソーシャルマインド P183)
幼児は三歳を過ぎたころから、生来の利他的な行動を抑制することを覚える。
過去に何か分けあってくれた者を優先するなど、
手助けする相手を選別するようになるのだ。
(同上 P182)
〈わたし〉はどこにあるのか: ガザニガ脳科学講義
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生後6~8ヶ月の乳児でも、他者を助けるものを選ぶことがテストで確認されています。
また、他者が何かを探していると、それを指さしして教えてあげるという利他的な行為もします。
生後6~8ヶ月の乳児が利他的だということは、人間のデフォルトが利他的であることのエビデンスになりうるもの。
人間は元来から社会的な生き物だということでしょう。
他者を肯定するものを肯定する…ということ。
他者が何か求めていたら助けてあげる…ということ。
この2つが人間の基本にあるということ、すくなくとも3才までは、利他的な行為が基本にある…。いいかえると、この2つは他者どうしが肯定しあうこと、とまとめることができるでしょう。
これはつまり<相互に全面肯定である>という対幻想そのもの。
母子一体、自他不可分、世界=自分であるというスタート時の心の原形(時点ゼロの観念=)がそこにあるといえるでしょう。
そして「幼児は三歳を過ぎたころから、生来の利他的な行動を抑制する」ようになり、ここから他者とともに生きていく現実に対応した社会性を身につけ、それは具体的には共同性そのものの発現として生成されるものだと考えられます。
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