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« ポリリズムと自然音と人声と | トップページ | <美>をミメーシスしようとする五七調? »

2013年10月23日 (水)

J・ケージはあらゆるものから音階をつくる?

ポリリズムと自然音と人声と

黒い点をいくつか、描きます。
その上に任意の角度で5本の平行線を置きます…

これがJ・ケージの作曲法?の一つ。
5本の平行線はもちろん五線譜の線。
黒い点は音符で、テキトーに、いくつか、あるいはたくさん、散らばらせてもいいのでしょう。5本の平行線と黒い点から<楽譜>が生成し、そこには<音楽>が生まれます。

この自由でランダムな黒点のあり方からでも音楽を生み出してしまうものは何か?
カオスノイズを整序して定型音にしてしまうものは何か?
雑音ともいうべきものをコード化するものは何か?


   J・ケージは、
   純粋音階と自然諸音との差異を同一化してみせた。

          (『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての音階」P227)


単純な電子発振器からサインウェーブをべき乗化してあらゆる音をつくることはシンセサイザーで可能になりました。信号のべき乗化とは逆?に、全域的なノイズからフィルタリングで特定の音を生みだすこともできます。ノイズオシレーターからフィルターとレゾナンスを駆使して音声を合成するシンセサイザーは現代ではスタンダードな電子楽器でしょう。


  J・ケージは一面ではエレクトロ・シンセサイザーの予見であり、
  別の面からは楽音の群団の様式化、法規化の可能性の予見でもあったとおもえる。

                          (『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての音階」P228)


<世界視線>ランドサット (LANDSAT)や臨死体験から説明されたように、ここではJ・ケージの具体的な方法論からともてもラジカルな(ものごとが)説明がされようとしています。黒い点と5本の平行線の意味するもの、これらが示しているものは何か…?


       -       -       -

   音階はJ・ケージの世界では、
   自然音から抽出された純粋音階ではないし、
   純粋音階から構成された古典近代の楽音の世界でもない。
   音階は病像のあるひとつのレベルを指定しているだけだ。
   そのレベルにはいらなければ幻聴を呼びいれることができない
   そのレベルである。

                 (『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての音階」P224)


この<純粋音階>が吉本隆明の思索の全工程?をつらぬく<純粋疎外>概念だとすれば、ここに思想の全貌を見出すことも可能でしょう。いつどのパートをとってもいつもその思想の全体像が反映されている吉本隆明の<作品>として典型的なもの(論考)がここにあるといえます。

知が商品であることがカミング・アウトされたポスモダの雰囲気のなかで、J・ケージを語ることはスノッブでカッコよかったのですが、これほどの普遍性とそれゆえの破壊力を秘めたJ・ケージへの思索は『ハイ・イメージ論Ⅰ』以外には見当たりません。


   幻聴の基本的な形式…に気がついていた人は、
   ひとりは宮沢賢治、ひとりはJ・ケージだ。

       (『ハイ・イメージ論Ⅰ』「像としての音階」P211)


           
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高橋源一郎氏が、まだ婦人のお腹にいる子どもに胎教をしようと思って音読してみたら、キレイな言葉(音韻、韻律)の作品は宮沢賢治だけだったという話があります。宮沢賢治は詩人というよりも作家ですが詩歌とはまったく別な形態のファンタジー?でありながら、その世界は十二分に<美>をそなえたもの。それは「幻聴の基本的な形式…に気がついていた人」だったからかもしれません。


膨大な内容情報やボキャブラリーではなく、<美>を決定するものはなにか? 巧みなレトリックとプレゼンテーションのスキルではなく、生来の受動態である人間に<美>を感じるさせるものはなにか? この延長には、その言葉が構築する堅固な共同性としての国家や共同体とはなにか?という問題があり、宗教や神というものがあるでしょう。 

わずか11個の音素で成り立つピダハンの言語から、1と0という2つの信号による2進法のコンピュータ言語(マシン語)、長音と短音の2つしかないモールス信号。そして12音階から生まれる音楽(主に欧米の)…。ハイイメージ論で駆使されている方法は、これらいずれにも有効な思惟であるかもしれません…。


       -       -       -

いくつかの黒い点は、全宇宙的なピンクノイズでも街中のホワイトノイズでもよく、世界中のどんなオブジェでもOK。あらゆる環界のものが対象であり、何でもいいはずです。
問題は任意の角度で置かれる5本の平行線。これはフィルターのたとえで、「音からわかるコト」で書いた<生命システム>のこと。ただの黒い点をコード化する装置…人間をはじめ、すべての生き物がもっている、生きていこうとするコトそのものを可能にしているシステムとそのすべての働きのことになります。ポイントは、あらゆる対象を感受するときの生命システムの働き。


   あらゆる音はここから分節化され微分されたもの。
   フィルターとなるのは生命システムでありマシンであり
   サインウエーブに対するバリアブルフィルターとレゾナンスです。


オブジェからの情報やエネルギーに対して生命システムはフィルターをかけています。エントロピー閉鎖系である生命システムが無制限に外部の情報やエネルギーを受容してしまっては危険で、オーバーフローで自爆するか、逆にエネルギーや情報が足りなくて生命の減衰や消失をまねくか…。

生命は閉鎖系である自らのシステムを維持し持続するためにも、取り込む情報やエネルギーを整序しています。そして急激な変化を防ぐために入力と出力の均衡とシステム全体の平衡を維持しています。ホメオスタシスを維持することそのものが生命の大きな働きであり目的にもなっているわけです。


           
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このエネルギーや情報の入力を動的に制御しているのがフィルターでありレゾナンスの働きと機能。この入力に対するフィルターとレゾナンスの機能は、生命システムそのものであり、心身そのものの働きと機能になっているといえるでしょう。


   入力を制限するフィルター

   入力の特定部分を強調するレゾナンス


基本的にシンセサイザーなどをメタフォアにすれば、以上の2点が外界からデータを受給するときの制御の機能となります。もちろんこれだけでは生命における入力とは異なります。エントロピー閉鎖系(正確には入出力の加減による定常開放系)の生命では外界からの受給が止まれば、それは即座に死活問題。入力と出力の平衡で維持されている生命にとっては、入力・出力いずれの停止も系の消失=死を意味しています。

人間でいえば、いちばんの問題は情報。エネルギーはともかく定常的な意識を維持するには外界からの情報の入力が絶えず必要です。音楽、幻聴、言葉…いずれも意識(観念)が介在する入力と出力の問題で、さらには出力が同時に入力となる人間ならではのシステムの特徴があります。平衡の維持のために耐えず再帰している観念の自己言及システム。ポストモダンな知見が提起しながらなかなか解を見いだせなかった問題かもしれません。吉本隆明が観念のべき乗化として当初から基礎に据えていた認識がここにあります。

もっとも問題になるのは情報がない無入力状態、あるいは情報が正常な入力として受容されなかった場合です。こういった入力のエラー状態を人間はどのようにクリアするのでしょうか…。

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