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2013年9月26日 (木)

ポリリズムと自然音と人声と

J・ケージはあらゆるものから音階をつくる?

鳥の鳴き声をはじめ、羽ばたき、獣が動く音、ゆれる枝葉の音、時に落ちる樹の実の音…
さまざまなジャングルの音。このジャングルの音=自然音からある特定のリズムを聴きだすのを教授=坂本龍一の音楽番組「スコラ」でやっていました。

ポリリズムの検証でジャングルの音を聴いてみるというもの。

いろいろな音が聴こえるだろうけど、基本にあるのは2拍子のはずです。
それは聴覚システムのマザーボードである身体のクロックが2拍子だから。心臓の鼓動や二足歩行の2拍子…。人間の全システムはこの2拍子をシステムクロックにしているといえます。他にあるのは微細なもので神経伝達のパルスと細胞壁のイオンチャンネル。これらは拍子よりもそのレスポンスのスピードのほうが問題で、イオンチャンネルは1万分の1秒を最速としてさまざまな心身の現象をコントロールしています…。(たとえば実母の音声に関しては脳幹はこのイオンチャンネルのスピードで反応していて、1万分の1秒で無意識のまま脳幹では反応することが確認されている…『右脳と左脳―脳センサーでさぐる意識下の世界』角田忠信)。いかにすべての人間がマザーによるラジカルなコントロール下にあるかという実証にもなるでしょう…)

           
右脳と左脳―脳センサーでさぐる意識下の世界 (小学館ライブラリー)

著:角田 忠信
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ところで、このマザーなクロックである2拍子以外は抽象(偶数と奇数に)すれば3拍子なので、すべては2拍子と3拍子の組み合わせと考えることができるもの…。そのために、2拍子と3拍子を組み合わせたポリリズムですべてのリズムを表現できるともいえるかもしれません。(番組ではそういった説明はしてませんが)

ある断続する音が同じように繰り返せば、それがリズムになります。
連続音や反復する音を自らの身体性でもあるマザークロックの2拍子で割り、さらには2拍子以外の音律?を3拍子としてまとめ、2拍子との関連を反復していく…。こうやって自然音は人間にとっての音律や韻律になると考えられます。

自らのマザークロック、2拍子から分周し反復されるリズムはマテリアルとなり、逆に規範として自らに作用します…。これが言語の韻律でも同じで、自然音への享受の仕方が人間の発声そのものを左右していったと考えられます。

       -       -       -

自然音と人声の区別はなく、反復性があるかどうか…という面から言語化を探っていく吉本隆明のアプローチは、同時に規範化の過程の解明でもあり、ブレやズレのない探究とその方法の可能性に満ちています。

  『母型論』P168
  もともとは自然音であっても人間の音声であっても、区別の意識はなかった。
  すこしでも反復性があるかないかによって、リズムを感じ、そのリズムの反復性は
  分節化、言語化にちかづく契機をなしたとみることができる。

  『母型論』P169
  この風の音を、「ヒュウ、ヒュウ」という擬音語であらわすのは、事実としての風の音を
  それにいちばんちかいと感じる母音と子音固有の結合体系で言語化することだ。
  白然音の喩は、複雑な陰影としてうけとられるが、言語としてみれば、その段階は
  初源的だということになる。

さらに吉本隆明は“言葉の分節化が、知覚の方へ形象の残余をうつしたことを意味する”と鋭く指摘しています。民族語などの固有性との関連で説明されるこれらは、最小単位の共同性で発現する場合の「アワワ言葉」ともいうべきものの説明として理解できるもの。

  『ハイ・イメージ論Ⅱ』「表音転移論」P326
  音声が言葉を分節するようになったことが、
  じつは知覚の方へ形象の残余をうつしたことを意味している。
  音声によって分節された言葉は、
  すでに形象の表現を未分化のままひきずっている。

即物的に確認できる解剖学的な事実を離れても、機能の連関から因果の過程を読み取っていく一つの科学的な方法がここにあるといえます。

           
母型論

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ハイ・イメージ論2 (ちくま学芸文庫)

著:吉本 隆明
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2013年9月20日 (金)

日本という複雑な幻想を解き明かした物語論…『共同幻想論』

最大の思想家といわれる吉本隆明さんの『心的現象論序説』『言語にとって美とはなにか』とともに三部作といわれるのがこの『共同幻想論』。国家からアイドルまで人が惹きつけられるものの理由が物語論的な分析として明らかにされていきます。

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 アジア的という壮大な構造物を分析した物語論? 何の参考にもなる可能性!

 国家は幻想である、宗教も幻想である…という言葉で有名な本です。
 でも、読んでみるとそうハッキリと国家のことが書いてあるワケではありません。
 それよりも、物語がどうやってできるかとか、どうやって伝えられるかということが詳しく解説されています。<巫女>や<他界>のことが書いてあって、つまりアイドルとかあの世とかについて説明されていて、読むほど面白くなる本だといえます。簡単にいえば物語のでっち上げ方が書いてあり、そのフィクションのカタマリとして社会や国家や宗教が示唆されていきます。そして日本はもっとも複雑で高度なフィクションのカタマリとして歴史に登場したということが解き明かされていきます。アジアのなかでも特別に複雑な幻想のカタマリとして成立したニッポン…そのリソースやその証拠として分析されるのが「古事記」や「日本書紀」そして「遠野物語」などのエピソードです。

 現代でいえば国家というものはレーニンが分析した「国家と革命」ネグリ=ハート 「帝国」などで理解できるし、機能的にはそれが当たっています。ここで吉本隆明さんが考察しているのはもっと根源的なもの。どうして国家があると思ってしまうのか?というような根源的な問題です。それらがより細かく微分されて、どうして巫女は共同体の予期をする(占う)のか?とか、なぜ幽霊はいると実感できるのか?というような具体例を通して分析されていきます。

 日本のオリジナルな特徴として天つ罪・国つ罪のように一つの行為が一方で罪になり他方では罪にならないような事例を上げて、異なる価値観が並立し組み合わさっていた事実から、異なる民族や文化が高度で複雑な共同体を形成しキメラな構造の社会を成り立たせていった可能性が指摘されています。それがマルクス経済学でいうアジア的共同体にも匹敵する、日本(だけ?)の観念のなかの壮大な構造物であるという指摘は、物語とその構成こそが共同幻想であり、そのある形がのひとつが国家や宗教なのだ…ということを示しているといえるでしょう。国家創世の神とその神話を、それを描いた知識人のレベルまでを解析しながら解体批評していく本書の展開はスリリングで画期的なもの。著者である吉本隆明さんが知の巨人とか最大の思想家といわれる証拠がここにあるといえる内容の一冊です。

 発刊当時は政治的な革命の書として読まれたようですが、現在では都市伝説から神話や宗教まで、ありとあらゆる物語を解体する手がかりとなるガイドと して読めるものだと思います。読むほど万能のガイドのように示唆するものが豊富な本書は繰り返し読むことが一つのポイントかもれません。さまざまな物語論とともに「共同幻想論」を読むと、この本がいかに原理的な根源的なテーマ を持っているかがわかります。そのすべてのはじまりに対幻想=性があるというのも人間が生きていくあらゆる場面で本書が役に立つ?可能性を示しているともいえそうです。

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ご近所から社会や国家、宗教まで シームレスに読める…『共同幻想論』

 

共同幻想論 (角川文庫ソフィア)

著:吉本 隆明
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