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2013年8月30日 (金)

“心の原書”?は最も難解といわれる本…『心的現象論序説』

最も難解な本といわれていますが、吉本隆明氏の膨大な著書の中ではいちばん理路整然と書かれている感じがします。いわゆる原理論の書。本書を読んでから『共同幻想論』『言語にとって美とはなにか』を読むと理解しやすいかもしれません。

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戦後最大の思想家の最も難解な本 ホントに読まれるのはこれから

たとえば数学や論理学は最も抽象的で科学的な、だからこそ普遍的な認識?ですが、その根拠は何か…というと結構ナゾです…。本書には数行で数理論の根拠が書かれているパートがあり、理論物理学などでも概念の均質性や空間性が前提ですが、そういった認識の根拠が説明されています。そういうことを力まずに何気 なく書くのは著者がバリバリの理系の人間だからじゃないかなと思いました。理系的な知識や論理でモノゴトを一刀両断にする人がいますが、理論や定理は現実 からある特定の方法の見方で抽出されたもの。そのため時代が変わり新しい実証や研究によって理論や定理も変わります。進歩というやつです。本書は逆にその変わらない部分にスポットを当てたともいえる内容になっています。変わらない部分からの変成がさまざまな心的現象のレベルになり理性であったり道徳であっ たり数理計算であったりという説明。病気や異常もその変数の違いとして把握されていきます…。なので、哲学だとか心理学だとか思想だとかいう先入観や前提 で読むとたぶん理解し難いのでしょう。本書が“最も難解な本”といわれる理由は、むしろ逆?で、先入観でしか読めない人がいかに多いのかを示しているのかもしれません…と自分的には思っています。クオリアデジャブも本書的には変数の違いや時空概念の錯合によるもの。現象学のような鋭いアプローチをしながら、自らの視点や論拠をも微分し相対化する方法はこれこそが科学だといえるものですが、ベキ上化する観念を大前提に自らのベキ上化をも考慮しながら考察さ れていく、ポスモダのキーでもある自己言及や再帰性が本書でも最重要ポイントになっています。

本書はたとえると、縦・横・高さの3次元からはじまりモノゴトの形や量や質を説明するヘーゲル小論理学が似てるかもしれません。これ以上は微分できないという要素から心理(心的現象)を説明しているからです。究極的に心的現象を時間と空間の概念で再構成していくのが本書の基本的な内容で、精神病も理性も感性も悟性も感動も盛り上がりも鬱もキレる のも…時空間概念の積分の特定の傾向として把握されていく…自分的にはそんな風に読めました。詩人ならではの文体か批評家ならではのアイロニーか、クセがあって読みやすくはない雰囲気がありますが、そこで引っかかっては本書は読めません。イメージや雰囲気、先入観でものをみる人には読みにくいのでしょう。たぶん団塊世代とか学生運動とか左翼がどうしたとか、著者は学者じゃないとか、そんなバイアスがかかっている人には無理かも。きっと新しい?スタンスの人や世代がキチッと読んで、その整合性やトーナリティに驚きながら意外なシンプルさに気がつくような、そんな本なんだろと思いました。

本書がホントに読まれるのはこれからだと思います。

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改訂新版 心的現象論序説 (角川ソフィア文庫)

著:吉本 隆明
参考価格:¥1,000
価格:¥1,000

2013年8月 5日 (月)

ピダハン、全員でつくる言葉と行動でつくる関係?

すべてのピダハン一人ひとり全員に、それぞれの精霊がいるという彼らの普遍性が、その共同性。

この精霊以外に特徴的なピダハンならではの共同性を象徴するものが、言葉です。ピダハンの言語は左右の概念も数も色の名前さえもない独特?の世界。動詞は一文に一つしか存在せず、シンプル?な構成の文しかありません。チョムスキーが重要視し、一般的に言語に当然のように存在するリカージョン(言語の入れ子構造)もまったくありません。ただし動詞の活用は65000通りもあります…。

ピダハンの会話のサンプルをみると、一人ひとりのオシャベリは対話というより単なる発話に近い印象のもの。非常にシンプルな言葉しか口にしないので当然かもしれませんが、それが大きな意味があるかもしれません。誰かの言葉を受けて応えるというより、一人づつが一言づつ何かを言っているだけというイメージなのです。そのために会話が成立していないようにみえるとも評されるほど。それこそが大きなヒントなのでしょう。それは会話全体で一つの文のように解釈できるからです。

そして、事実そのようで、一人づつが動詞一個以下のシンプルなリカージョンのない言葉を口にし、それが全体として一つの物事を表すように構成されています。会話全体が、一人の語りのようにも解せる全体性をもっているワケです。つまり、ある出来事に関して、そこにいる全員が同じ認識を持ち、それについてそれぞれが一言づつ表現している…というような印象がします。同じ事を見た全員が、阿吽の呼吸で、それについて語っているという感じなのです。ここではピダハン全員に精霊がいて、お互いにそれが見えるように、全員が同じ認識をもち、同じようにそれを語る(同じように語れる)といった全体性があります。これがピダハンの共同性なのでしょう。もっとも抽象化が可能で自由である言語活動において、最も端的にその特徴ある共同性が表出してると考えることができます。一人の発言がそれぞれあるパートや部分として機能し、全体を構成していくようなコミュニケーション? 一人一人を要素とし、全員の語りで完成する物語。叙事詩の語り部としての一人ひとりがピダハンとしての個人であり、それがピダハンなのでしょう。

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ピダハンの研究者であるダニエル・エヴェレットが真っ先に興味をもったのが「交感的言語使用」がないことだといいます。「こんにちは」「さようなら」「ご機嫌いかが」「すみません」「どういたしまして」「ありがとう」といった人間関係を維持するための言葉で、普通は初対面の時から最も必要だと考えられるものでしょう。それがピダハンにはありません。理由は簡単で、このことが宣教師でもあるエヴェレットが棄教した大きな要因ではないかと思われるほどのものです。次の言葉を書き留めるときに宣教師エヴェレットは“始めに言葉ありき”とした自らの信仰の教えを超えるものを知ってしまったのではないでしょうか。


    後悔の気持ちや罪悪感を表すのは、言葉ではなく行動だ。

             (P23 ピダハン―「言語本能」を超える文化と世界観


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文明は、認識できないものを認識しようとする…というリニアな進歩をしてきました。ただしそれは進歩であっても解決にはならず、マテリアルな状況を変更すればOKと考えたかつての革命はそれほど意味がなかったこともいまや明らかです。

認識できないものを{(認識できないもの)として認識する}認識…のベキ上化 や、あるいはもっと日常にまでいきわたっている微分する一方だけの、ベイトソンのゼロ学習のようなあるいは定向進化的なデッドロックまっしぐらのビョーキ…は日常にありふれていますが。

文明が個人の存在それぞれに向かって何かが還元できると考えて展開してきたのと真反対の共同性がピダハンにはあるような気がします。

ピダハンが気にするのはリアルだけ。現実にどうするかという問題だけがピダハンの世界観なのではないでしょうか? 目前の現実、リアリティに敏感?なピダハンが気にするのは眼前の実際に目に見えるものだけです。彼らが気にするのは<現れるコト>と<消えるコト>の2つ。つまり自分たちの視界に入ってくることと視界からでていくことの2つなのです。可視化することと非可視化すること。

ピダハンは2次元を理解することができません。つまり写真や絵を読むことができないのです。ジャングルという生命そのもののような3次元空間で、そのリアリティに最適化されているピダハンには2次元は感覚外のことなのかもしれません。

言語と観念による壮大な構築物(上部構造=共同幻想)を環境世界とする日本人とは真逆に、現前に見えてくるものとの営みだけを暮らしの世界としてきたピダハン。幻想と現実を結びつけるものとして儀式が発達した日本では、それそのものがワビサビに至るほどの自然的変遷を経ていますが、ピダハンにはその儀式もありません。現実を抽象化あるいは象徴化して保存したり伝搬する必要性をピダハンは感じていないのでしょう。必要なのはリアル=現実の解だからです。しかし、これこそが今の日本でも世界でもあらゆる先進国で必要となってきていることではないでしょうか…。


  ピダハンと暮らしはじめた初期のころ、わたしも不思議に思ったが、
  儀式というものにおよそ欠けているのである。
  儀式らしき行動を見ることのできる場面もあるが、
  明らかに儀式と呼べる事例は見つけられない。

             (P117 ピダハン―「言語本能」を超える文化と世界観


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ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観

翻訳:屋代 通子
参考価格:¥3,570
価格:¥3,570

   
           
共同幻想論 (角川文庫ソフィア)

著:吉本 隆明
参考価格:¥620
価格:¥620

   


「空白」と精霊とピダハンの言葉と

規範に引き寄せられた言語、さえずるピダハン族

鳥のように鳴いてコミュニケーションする少数民族ピダハン

 既成概念を遥かに超越。謎の言語を操るアマゾンの少数民族(NAVERまとめ )

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