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2009年3月 9日 (月)

『ハイ・エディプス論 個体幻想のゆくえ』

『母型論』は系統発生OK

 生まれてから死ぬまでの個体の歴史にそった質疑応答で構成されているのがこの『ハイ・エディプス論―個体幻想のゆくえ』 。ある種シリアスな質問に対してよりハードな応答になっていて、ハードコアな吉本思想が言明されている。

 

   党派として考えられている
    「ほんとうのこと」は全部だめだ…

                                (P55)

   …母親が「ほんとうのこと」をいうはずがない。
   それが「ほんとうのこと」ですよ。

                                (P47)

 

 いわゆる共同幻想への全否定や、共同幻想の母型になる<母親(との関係)>についてのある種ペシミスティック?な見解でもある。吉本理論の振幅においてもっとも極端な位置でもあるが、それは 共同(幻想)性が個体(幻想)にとって真理であるハズがなく、その絶対に超えられない位相を表現する方法あるいはその指示表出そのものとしての〝こういう表現〟だったと思われる。

 ラカンの鏡像段階とパラノイア理論についてのラジカルな考察と批評、バロウズ!までも取り上げたスノッブ?さも意外な面白さとなっている。質問者サイドの生真面目さにオーダー以上の応答を返す両者のやり取りがこの本の出来を左右しているともいえるだろう。

 ラカンの想像界・象徴界・現実界の三界(論)は乳児・胎児期であればその全部が対幻想の領域にはいるという指摘や、フーコーの権力(論)と視覚(像)との関係、〝ミル・プラトー〟が普遍的でありうる原始的とアジア的の境界についてなど興味がつきない豊富な内容となっている。柳田国男にヒントを得た吉本の思索で「軒遊び」や「外遊び」、「学校」と「遊び」の関係など常に新鮮でユニークでもある吉本理論の可能性があふれている。驚くのは自分の発想を現在どう考えているか?について自問自答する最後だ。ヴェイユや親鸞についての想いは吉本の自己表出であり、読者にとって本書が見事な指示表出であることの分別(の在り処)を探すのも楽しいハズだ。

 マルクスをはじめ自他の理論を縦横無尽にラジカルに語っているが、本書でのスタンスは徹底的に吉本個人の、つまり個体幻想からの語りになっている。吉本理論の全体像がいつもと違った視点から読めるのだ。

           
ハイ・エディプス論―個体幻想のゆくえ

著:吉本 隆明
参考価格:¥ 2,039
価格:¥ 2,039

   

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