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2009年2月 3日 (火)

<直線>という抽象をあらわすもの

 人間は具体的な自然を対象にしているのに高度な抽象である<直線>を(で)あらわすのはナゼか? 『心的現象論本論』「目の知覚論」ではその理由を<感情>であると呆気なく説明しています。ただし『本論』ではそうですが『心的現象論序説』では独立したⅣ章として「心的現象としての感情」があり、吉本理論のオリジナルティの典型的な例でもあるかのような詳細な解説がされていて、そこには時空間概念で厳密に定義された<感情>があります。吉本理論をめぐるさまざまな論議ややり取りでもこれほど取り上げられていないパートはなく、ほとんど誰もタッチしていないのではないでしょうか。

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   <眼>の知覚はこの種の線分の集合から、
   いつも<さっぱりしたい>という感情を誘引し、
   知覚にみちびき入れる。

           「眼の知覚論」(『心的現象論本論』 P16)

 

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 『本論』では以上のように{<さっぱりしたい>という感情}が{<眼>の知覚}から誘引されるのだ、と説明されています。そしてそれが知覚へ再帰するということです。

 知覚の感官のサイドから考えれば、まず、これは閾値の問題です。
 <眼>の閾値にストライクする刺激であるかどうか、ということで、刺激量の最小限/最大限が規定されており、もっとも感官にとって無理なく受容できる刺激の質や量が問われているのだと考えられます。閾値の中央に分布する刺激であれば感官は無理なく受容できます。
 そして、それは内臓感覚(植物的階程)的な自己表出として<さっぱりしたい>というオーダーに応えるもの。外刺激に対して感官が内臓感覚と体性感覚の再帰=フィードバックの結果として収斂していく過程だと考えられます。常時環界に接している感官と心身が、その接点である知覚を環界に対して最適化していく自然過程のひとつであり、アフォードとリーチングのマッチング過程ともいえます。

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 『心的現象論序説』から『ハイ・イメージ論』まで貫き、言語論のいちばん大きく根底的な問題でもある<純粋概念>の初源がここにあります。つまり自己表出(自己確定)と指示表出(指示決定)の初源がここにあるということです。哲学的にいえば対象と主体の峻別(が)できない<何か>がここにあるのです。M・ポンティなどが問題提起しながらも対象化しえなかった、つまり把握しきれなかった問題です。

 それが<純粋概念>です。
 <自他不可分>であった胎児からはじまる観念の根本であり初源です。
 観念が了解と対象に分離しつつ、それそのものも観念の了解の構造にビルトインされている(いく)というベキ乗の再帰構造こそが遺伝子以来生命としての特徴です。
 吉本理論は三木成夫の解剖学に依拠する部分も大きいですが、『心の起源』(木下清一郎)などによれば遺伝子レベルの自己複製構造そのもの、その再帰性や入れ子構造にすでに〝心の起源〟が見出されるということで、『序説』が再帰・自己言及の構造に観念の起源と特徴を見出しているのと同じ観点がみられます。

 <純粋概念>は再帰する際に自他不可分になる了解と対象の関係性ですが、逆にそれは再帰するから自他不可分になるともいえる逆説的な両義性のうえにあります。それらが<入れ子>構造として<恒常性>を保ちつつ継続しようとするのが個別的現存であり個体としての人間です。

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 自然対象を抽象的な<線>へと変換する必然性はこの<純粋概念>を<ゼロ>としてどちらか(どこか)へ了解のベクトルがシフトする<基点>として仮構され作用します。人間の観念≧認識が<自由>であることを獲得できたのは、この<純粋疎外>を<ゼロ基点>(時点ゼロの双数性)として作用するところにあると考えられるでしょう。このアフォードとリーチングの組み合わさった<入れ子>構造こそが心的現象の初源なのです。そこからの遠隔化はあらゆる人間の営為のバリエーションと高度化の原動力となってきたワケですが、同時に、この遠隔(対称)化の阻害とそのマテリアル化が病と異常の根拠として抽出しえるところが吉本理論のひとつの大きな可能性といえます。

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